啓蟄(けいちつ)

啓蟄(けいちつ):3月6日頃
「啓」は出発するという意味、また「蟄」は虫が冬になり土の中にこもるという意味です。
すなわち、冬の間土の中に冬眠していた虫や動物たちが、春の訪れとともに外に出てくる時期です。
昔中国では、蟻などの昆虫も、ヘビなどの爬虫類も、カエルなどの両生類も全て「虫」と呼んでいました。
また人の体の中にも虫がいると言われており、「虫の居場所が悪い」や「虫が騒ぐ」などもその名残とされています。
長い冬ごもりから解放されることで、喜びの時季とされています。
また、この頃は夏ほどの激しさはありませんが初雷が轟くことが多く、
その音で巣の中にいた虫たちが驚いて出てくると考えられていたため「虫出しの雷」「蟄雷」とも呼ばれます。
まだまだ寒い時期ですが、日の長さはみるみる長くなり、
爽やかな風と優しい日差しの中、人も生き物も心が弾む様子が伺えます。
⑴蟄虫啓戸(ちつちゅうこくをひらく)
3月6日~10日頃
虫たちは長い冬ごもりから解放され、暗い土の中からトントン!と
戸をノックするように地上に這い出してきます。
身近な生き物ではテントウムシやダンゴムシ、カエルなどが顔を出します。
陽気に誘われて外へ出たくなるのは人間も同じで、
心がドキドキ・ワクワク、何か新しいことが始まりそうな予感がします。
⑵桃始笑(ももはじめてわらう)
3月11日~15日頃
「笑う」とは蕾がひらくことです。桃の蕾がひらく時季とされており、桃花が競い咲く頃となります。
古代中国では長寿のシンボルとされ、日本でも霊力を持つと信じられてきました。
見渡す限りの野面を彩る淡いピンク色の花々は、桃源郷と呼ぶのにふさわしい風景です。
⑶菜虫化蝶(なむしちょうとなる)
3月16日~20日頃
サナギの姿で冬越しした蝶の幼虫が羽化し、立派な姿で春の花々の蜜を吸いに飛び回る頃です。
ここでの「菜虫」とは、大根葉や白菜などの葉を食べる虫のことで、モンシロチョウの幼虫が一般的です。
この季節の食べ物
たらの芽
ウコギ科タラノキ属。落葉低木樹である、たらの木の新芽で「たらんぼ」とも呼ばれます。
見た目は山漆の新芽にも見えるので採取する際は注意が必要です。
にしん
ニシン目ニシン科の魚で、春告魚とも呼ばれます。
産卵時期が冬から春のため、その時期にもっとも栄誉を蓄えて脂がのります。
あさり
あさりは春と秋に産卵時期があり、その直前は身が膨らみ美味しいとされています。
あさりには亜鉛や鉄粉、ミネラルやビタミン12が豊富に含まれており、
煮汁まで余すことなく使うのがおすすめです。
さわら
魚へんに春と書いてサワラです。
春に産卵のために瀬戸内海の沿岸へ押し寄せてきます。
特に岡山の鰆が人気です。
旬は産卵期直前の春ですが、関東では脂がたっぷりと乗った冬の「寒鰆」も人気です。
葉ワサビ
茎部分を示す「ワサビ」の葉の部分や花芽のことです。
特に、柔らかい若葉は春限定の味覚です。
醤油漬けでいただくのが特に美味しく、ツンとした爽やかな辛味が特徴です。
春キャベツ
秋に種をまき、2月下旬から5月中旬ごろに収穫するキャベツを春キャベツといます。
一般的な楕円形で葉がぎっしりと詰まっているキャベツとは異なり、
円形でフワッと葉が巻いていて葉の色も鮮やかな黄緑色〜黄色をしていることが多いです。
水分量が多く、葉が柔らかいのでサラダなどの生食や、
芯が柔らかい飲んで芯まで使ったスープもおすすめです。
カリフラワー
カリフラワーに含まれるビタミンCは熱に強いのが特徴です。
カリフラワーを茹でた時にお酢かレモン汁を加えると、美しい白色を保つことができます。
高血圧を予防するカリウムや腸をキレイにする食物繊維が豊富に含まれています。
この季節の草花
スミレ
3月上旬〜5月上旬に開花します。
日本ではおよそ60種類が分布しおり全国各地でみられます。
形が大工道具の「墨入れ」に似ていることから「スミレ」という名前がつけられたと言われています。
松尾芭蕉や山部赤人など多くの歌人が詠んでおり、日本で昔から親しまれてきた花です。
ヨーロッパでは古くからサラダや砂糖がけなどにして食べられています。
桃
弥生時代にはすでに中国から伝来していたとされています。
昔から桃の花には邪気を祓う力があるとされました。
また「木」偏に「兆し」と書くのは、春の兆しを告げる意味があるという説もあります。
レンギョウ
春の訪れを黄金いろの花で華やかに告げる落葉低木です。
3月中旬〜4月中旬に開花します。枝に節があり、
下に垂れて接地するとそこからも根を出す繁殖力が強い植物です。
この季節の生き物
トンビ
沖縄を除き、日本全国で見られるタカ科の鳥です。
「ピーヒョロロロ」と美しい鳴き方をします。
餌としている動物の死体がよく見つかる河口や海岸などを生息地としています。
カワラヒワ
全長13.5cmほど、スズメほどの大きさで黄色味のある褐色の春鳥です。
繁殖後に草地の広い河原で見られることが多いので
「カワラヒラ」という名がついたと言われています。
モンシロチョウ
春の訪れとともに、畑などを中心に各地に見られる蝶です。
4〜6cmほどの大きさで、白い羽根にいくつかの黒い点がついています。
野菜に卵を産み、幼虫はキャベツや油菜などの葉の裏でよく見られます。
ヤマトシジミ
日本では本州以南に生息している蝶です。
銀色で黒い点が並ぶ葉の裏の模様がシジミに似ています。
カタバミなどに卵を産み、幼虫はそれらの葉を食べて育ちます。
成虫が見られるのは4 〜11月ごろで公園や畑などいたるところで見られます。
幼虫は甘い液体を出すので、たくさんの蟻につきまとわれていることがあります。
この季節の行事やオススメ
月々瀬梅渓(つきがせばいけい)
2月中旬〜3月
奈良の月々瀬を流れる五月川の両岸から山腹にかけて約1万3000本もの梅の木が立ち並び、
1922年には名勝地に指定されました。
赤・白・桃などさまざまな色の梅が並び、江戸時代には松尾芭蕉も感嘆して歌を詠んでいます。
およそ750年前の鎌倉時代に真福寺から梅が植えられたことが始まりとされています。
東大寺のお水取り
3月12日
3月12日の夕刻から、奈良県奈良市にある東大寺で催される「修二会」の儀式の一つです。
信者が奉納した12本の籠松明。
その籠松明の1本の重さは約80キロあります。
修行僧たちが籠松明を担ぎ百余段の階段を駆け上って、二月堂の回廊で振り回します。
この燃えかすを拾うことができると無病息災と言われています。
深夜には観音様にお供えするための「お香水」を若狭井という井戸から組み上げます。
涅槃会(ねはんえ)
3月15日
旧暦の2月15日に各寺院で行われる法要です。
この日はお釈迦様が入滅した日とされており、
日本では推古天皇の時に奈良の元興寺で行われたのが初めてと言われています。
彼岸の入り
3月18日
彼岸とは「向こう側」つまり「あの世」を意味します。
春分・秋分の前後7日間のことを言い、初めの日のことを彼岸の入りと言います。
彼岸に到達するには六波羅蜜と呼ばれる6つの修行を修めなければなりません。
その修行をするのに要するのが7日間なので、彼岸は7日間とされています。
彼岸にはご先祖様の霊を供養し、感謝の気持ちを伝えるためにお墓参りなどを行います。
春のお彼岸ではご先祖様に「ぼた餅」をお供えします。
これは春に咲くお花「牡丹」にちなんだ名前とされています。
同じものでも秋のお彼岸では「おはぎ(萩)」をお供えします。
writtn by はれる88