夏至(げし)

夏至(げし):6月21日頃
夏至とは1年の中で最も太陽が高く昇り、昼間が最も長い日です。
秋の「長夜」に比べて夏の短く明けやすい夜は「短夜」といい、
東京では冬至と夏至の夜の長さが約5時間も異なるそうです。
中国ではこの日に端午の節句と同じような行事を行い、
ちまき・うどんを食べ、欧州各地では火を焚く風習があります。
⑴乃東枯(ないとうかるる)
6月21日~26日頃
夏至の時季にひっそりと枯れゆく靫草(ウツボグサ)。
その別名を「乃東」「夏枯草(かこそう)」と言います。
冬至ごろに芽を出して、夏至に枯れることから
「生じて冬至る、枯れて夏至る」と言われる珍しい植物です。
靭とは武士が矢を入れるために使った道具のことで、
花穂がその形に似ていることからこの名前がつきました。
花を煎じて飲むと利尿や消炎作用があり、
煎液は捻挫や腫れの塗り薬として使われてきました。
⑵菖蒲華(あやめはなさく)
6月27日~7月1日頃
菖蒲(アヤメ)の花が美しく咲く頃です。
平安時代の文学によると、元々は端午の節句の菖蒲湯に用いられていた
サトイモ科の菖蒲(しょうぶ)をアヤメと呼んでいました。
やがて江戸時代からは現在のアヤメ科の菖蒲(アヤメ)をアヤメと呼ぶようになりました。
菖蒲(アヤメ)・杜若(カキツバタ)・花菖蒲と似ている花が多いですが、
アヤメは花びらの付け根あたりに網の目(綾目)があることで見分けられます。
宮城県の「多賀城跡あやめ祭り」や北海道の「あっけしあやめまつり」は
多くの見物客で賑わいます。
⑶半夏生(はんげしょうず)
7月2日~6日頃
夏至から数えて11日目の雑節です。
「半夏」とは薬草にもなる烏柄杓(カラスビシャク)の漢名で、
この頃に生えることから「半夏生」の言葉が生まれたとされています。
この日までに田植えを終えると、半分の収穫が確保されると言われ人々の目安にされてきました。
半夏生に降る雨は「半夏雨」と呼ばれる大雨が降ることが多く、
この日の天気によって1年の豊作を占う習慣があったそうです。
この季節の食べ物
枇杷
初夏に鮮やかな黄橙色の鮮やかな実をつけるバラ科の常緑高木です。
もともと日本にも自生していたとされますが、江戸時代に中国から伝わった品種を元に、
日本でも栽培が本格的に始まりました。
当時は食中毒の予防として漢方や民間療法として役立てられてきました。
枇杷にはカロテンが豊富に含まれているため、生活習慣病の予防やガン予防の効果があります。
また枇杷の葉にもタンニンなどが含まれており、昔から薬用としても使われてきました。
選ぶ際には果実にうぶ毛があり、軸がしっかりしているものがおすすめです。
カマス
口が大きく、硬い歯があります。
ヤマトカマスを「水カマス」、アカカマスを「本カマス」と言います。
夏に産卵をするため、その前に当たる晩春から初夏にかけて最も脂がのり美味しくいただけます。
旨味が強い白身なので塩焼きや干物、フライなどが好まれます。
カンパチ
ブリと同じスズキ目アジ科ブリ属で大きなものは体長1,5mにも及びます。
左右の体には斜めの太い線があり、体を正面から見ると八の字に見えることから間八と呼ばれるようになったそうです。
体が黄褐色で鮮やかなものが新鮮で、脂がたっぷり乗っているカンパチは刺身にするルノが絶品です。
カワハギ
本州から九州にかけて、100mより浅い砂地に生息する魚です。
調理をする際に皮を剥ぐことからカワハギという名前がつきました。
夏場は身も美味しいですが、特に肝は濃厚な味わいがあります。
秋になると冬に備えて餌を多く摂るので、肝臓がさらに大きく発達します。
脂肪分が豊富でこってりとした旨味と甘みがある肝は絶品です。
青山椒
山椒の実は1年のうち、初夏と秋の2回の収穫時期があります。
5月下旬から6月にかけて採れる青い実は、身が小さくマイルドな辛味が特徴です。
消化不良を改善したり、食欲の増進作用があります。
鎮痛作用やデトックス作用もあり、体に良い成分が多く含まれます。
さくらんぼ
セイヨウミザクラの実で正式名称は「甘果桜桃(かんかおうとう)」と言います。
血圧を下げ、動脈硬化症を防ぐ役割があります。
中郷では漢方薬に利用されるなど、栄養が豊富です。
山形県のさくらんぼが有名で、全国の70%ほどを占めています。
枝豆
未成熟の大豆を収穫したものが枝豆です。
ビタミンや食物繊維、鉄分が豊富で、野菜と大豆の良い栄養素を併せ持っています。
疲労回復効果が高く、美肌や貧血予防にも良いです。
子どもから、大人のお酒のおつまみまで、幅広い年齢層から支持を集めています。
水無月
夏越しの祓(6月30日)に食べられてきた和菓子です。
砂糖やもち粉でできた白いういろうの上に、甘く煮た小豆が乗っています。
暑気を払う氷のかけらを模して三角の形に切られています。
水無月の三角の形は蛇のウロコ模様を模したものだと言われています。
蛇のウロコ模様は三角の連続模様で、吉祥文様の一つとされています。
三角形は厄除けの代表的な形です。
この季節の草花
冬瓜
夏が旬ですが、冬まで保存ができることから「冬瓜」という名前が付けられました。
90%以上が水分で、これからの暑い季節には身体の熱を下げてくれたり、
呼ぶな毒素を排出する効果があります。
夏バテや、身体のむくみにも効果的な食材です。
半夏生
「半夏」の時期に花を咲かせる植物です。
日本・フィリピン・中国の水辺や湿地に自生するドクダミ科の多年草です。
「烏柄杓」とも呼ばれ、葉の上の部分が白くなっているため、
「半化粧」と呼ばれるようになったとも言われています。
この季節の生き物
アマガエル
体長3〜4cmほどの小さな緑色の体をしたカエルです。
オスは雨が降る前には「ケッケッケッケ」と鳴きます。
この雨鳴きは大気中の湿度や気圧の変化を敏感に感じることができ、
雨が降る時がわかると考えられています。
また雨鳴きとは別で、オスがメスの気をひくために鳴くこともあります。
その時は「ゲッゲッゲ」「クワックワックワ」と鳴き、広告音と呼ばれます。
かっこう
「カッコウ」と鳴くことから名前がついた夏鳥です。
全長は約35cmほどで、腹の部分には白色で細縞があります。
日本では全国的に見られますが、本州中部から北に多く生息しています。
フィンランドでは悲しみの声として、またフランスでは楽しい声として、
それぞれの民謡で歌われています。
日本ではもともとドイツ民謡の「かっこう」が有名で小学校の音楽で勉強します。
ホトトギス
体長は28cmほどのカッコウ科カッコウ目の鳥で、
カッコウとよく似た見た目をしています。
体の色は灰色で、胸と腹に白と黒の縞模様があります。
織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の気質を表した「鳴かぬなら…」の
俳句でも有名な鳥です。
5月から7月にかけてオスがよく鳴きます。
アゲハチョウ
4cmから6cmほどの大きさがある蝶で、
全体が薄い黄色・黒、うしろばねに青やオレンジの模様があります。
アゲハチョウにも色々な種類があり、ナミアゲハやキアゲハがよく見かけられます。
アゲハチョウといえば黄色のイメージが強いですが、
美しい青・黒の羽をもつオオツルアゲハなどもいます。
カワセミ
かつて中国では「翡翠(ひすい)」はカワセミの漢名でした。
カワセミは青緑色の美しい色の羽を持っており、
その色が由来となって宝石の名前にも使われるようになったそうです。
この季節の行事やオススメ
三室戸寺のあじさい園
6月上旬〜7月上旬
約1200年前に光仁天皇の勅願により創建された三室戸寺です。
京都府宇治市にあるこのお寺は毎年この時期になると多くの観光客が集まります。
別名「あじさい寺」と呼ばれており、
杉木立の間に咲く約2万株の紫陽花が色とりどりの色彩を放ちます。
西洋アジサイ・額アジサイ・柏葉アジサイなど50種類が咲き乱れており、
散策中にも様々な紫陽花の顔を見ることができます。
ほおずき縁日
6月23日・24日
東京都港区にある愛宕神社では「千日詣りほおづき縁日」が行われます。
江戸時代に出版された『東京歳時記』にも登場する由緒ある縁日で、
社殿前の茅(ち)の輪をくぐって参拝することで千日分の後利益を得られると言われています。
境内には魔除けの縁起物であるほおずきが並び、参拝者に配られます。
夏越の祓
6月30日
1年の半分が過ぎる6月30日には、日本各地の神社で「夏越の祓」が行われます。
昔の暦では6月で夏が終わり、7月からは秋とされていました。
そのため「夏越」と言います。1年のうちの半年分の穢れを落として、残り半分の無事を祈る行事です。
多くの神社では茅の輪くぐりが行われます。
茅の輪とは、イネ科の多年草である茅(ちがや)という植物を束ねて輪にしたもので、
大人一人が立って通れるくらいの大きさがあります。
自分の足でこの輪をくぐることで邪気を払うことができます。
茅の輪以外に、人の形をした紙に自分の穢や体調の悪いところをもらってもらい、
川に流す「形代流し」を行う神社も多くあります。
海開き
海開きの時期は各地によって違いますが、
水が冷たい間遊泳禁止とされていた海が、広く公開されることを指します。
海開きが終わると、海の家や屋台・パラソルなどが立ち並び賑やかな海水浴場になります。
事故が起こらないように、海開きの際にお祓いをする場合も多くあります。
祇園祭
7月1日〜7月31日
夏の風物詩となっている京都府八坂神社の祭礼です。
平安京で疾病が流行った貞観11年に無病息災を祈る御霊会という儀式が行われたのが起源です。
7月1日の「吉符入り」から7月31日の「疫神社夏越祭」まで1ヶ月通して行われるお祭りです。
日本の三大祭りとされており、特に17日は最大の見せ場となる山鉾巡行で、
鉾や長刀を立てた山鉾が四条烏丸から京の街を巡ります。
written by はれる88