大雪(たいせつ)

大雪(たいせつ):12月7日頃
本格的に雪が降り出す頃のことです。
気圧配置が完全な冬型となり、大陸の高気圧が張り出して強まります。
山の峰々は積雪に覆われ白く染まり、
日本海側の平野部も湿った大気の影響で雪が降り積もります。
北風が吹き、いよいよ寒気が増してきます。
降雪が多い地方では、雪の重みで木が倒れないように雪吊りをします。
⑴閉塞成冬(へいそくしてふゆとなる)
12月7日~11日頃
「空を塞ぐようにどんよりとした雲が広がり、冬に成る」という意味です。
特に、日本海側の空は、冬の季節風の影響で水分を多く含んだ厚い雲に覆われます。
大陸から冷たい北西季節風が吹くと、
その風より温度の高い日本海から多くの水蒸気が吸い上げられ、
風に乗り大量の雪雲となります。
その結果日本海側では特に雪や氷雨が降ります。
⑵熊蟄穴(くまあなにちっす)
12月12日~15日頃
熊が穴にこもるようになる季節です。
熊などの哺乳類や鳥類の一部は冬になると活動を停止し、
体温を低下させて食料の少ない冬を過ごす「冬眠」をします。
冬眠をする前、秋になると大量の食べ物を摂取し、
冬眠や冬ごもりをして春に備えます。
⑶鱖魚群(けつぎょむらがる)
12月16~21日頃
「魚」偏に「厥」と書く漢字を使います。
鮭が群がって川を遡上する様子を表します。
川で生まれた魚は、海で大きく育ち、
産卵のために再び自分の生まれた故郷の川へと帰ってきます。
古来の人々は鮭の遡上を神秘的なものとして捉えていました。
この季節の食べ物
鮭
川の上流で生まれた鮭の稚魚は、
海へと下り数年かけて大きく成長した後、元の川に戻ってきます。
アイヌの人たちは下流で鮭を獲り尽くさずに、
駐留や上流で暮らす人の分も考えて節度のある漁をしていたと言います。
美味しいからと言って、いくらや白子を持った鮭ばかりを狙うのではなく、
今後それらの魚が上流で子を生む翌年以降のことまで考えて漁をしていました。
アイヌ語で鮭は「カムイチェプ(=神の魚)」と呼びます。
厳しい冬を越すための貴重な食材でした。
タラバガニ
甲幅約25cmほどのカニで、「カニ」という名前が付いていますが
生物学上の分類としてはヤドカリに近いとされています。
脚は外見上は8本ですが、
実は10本あり1対の小さな足が甲羅の下に隠れています。
また、通常は横歩きするカニが多い中、
縦に歩くことができます。
鱈と同じような場所で獲れることから「鱈場蟹」の名前が付いたとされています。
金柑(きんかん)
鮮やかで綺麗なオレンジ色と、
小さくて可愛らしい見た目、そして甘味とほろ苦い風味が特徴です。
ミカン科の常緑低木に生り、7〜10月にかけて花が咲き、
晩秋〜冬にかけて実が付いて熟します。
レモンと同等のビタミンCが含まれており、
風邪の民間薬として昔から用いられてきました。
金柑の主な産地は、宮崎県・鹿児島県・熊本県です。
また樹高が比較的小ぶりなので、家庭の庭木としても親しまれています。
にら
一年を通して出回るにらですが、
冬から春のものは葉が暑くて柔らかくなります。
独特の匂いがありますが、これは硫化アリルによるもので、整腸作用があります。
また体を温め、風邪の予防や疲労回復にも効果的です。
火を通すと匂いが和らぐので、炒め物や鍋料理にもおすすめです。
大根
日本で最も多く生産されている野菜のひとつです。
春の七草に登場する「すずしろ」は大根を指しています。
おでん・漬物・薬味・煮物・サラダなど幅広く料理に使えます。
晩秋から初冬にかけて旬を迎える大根は、
この寒い時期に特に美味しくいただけます。
熱々に茹でた大根に、練り味噌をつけて食べるふろふき大根は、
冬になると食べたくなる料理のひとつです。
この季節の草花
蝋梅(ロウバイ)
ロウバイ科ロウバイ属、中国原産の落葉低木です。
名前に「梅」という字が入りますが、
梅とは異なり、寒い季節にバラのような見た目の淡いクリーム色の花を咲かせます。
蝋細工のような半透明で光沢のある花でとても可愛らしく、
また香りがとても良いのが特徴です。
中国では、早春に咲く梅・水仙・山茶花に並んで雪中の四花の一つとして愛されています。
西洋桜草
プリムラの和名で、花茎に輪状になった小花がたくさん咲きます。
20世紀前半にイギリスを中心に品種改良が行われました。
多くの園芸品種があり、花色が豊富なポリアンサ、
大型の花が球状に咲くトキワザクラなどが特に有名です。
クリスマスローズ
12月頃に開花することからこの名前がつきました。
花が少ない冬に開花することから、
味気ない冬に彩りを与える花として長年愛されてきました。
白・ピンク・緑・紫・黄・黒・アプリコットなど、シックな花色が多いです。
藪柑子(ヤブコウジ)
ヤブコウジ科の常緑小低木で、高さは30cmほどです。
『万葉集』には「山橘」の名前で詠まれており、
昔から日本人に愛されてきた植物です。
秋から冬にかけて赤く小さな実が生り、
鉢植えにしてお正月には縁起物としても使われます。
別名「十両」とも言います。このような呼び名で同じく赤い実を結ぶ植物として、
一両・百両・千両・万両がありますが、
この中で同じくヤブコウジ科のものは百両(カラタチバナ)と
万両(ヤブタチバナ)のみです。
この季節の生き物
ミミズク
フクロウに似た鳥で、耳のような羽角を持ちます。
一般的にオオコノハズクを指します。
「ズク」とはフクロウを表す古語で、
耳のあるフクロウ(=ミミヅク)という名前になったという説があります。
基本的には、羽角の有無で区別ができますが、
中には区別しにくい種もあります。
大鷺
鷹の中でも特に大きな大鷲です。
オスは全長89cm、メスは102cmほどもあり、翼を広げると240cmにもなります。
長い首をたたむように縮めて空を飛び、川や湖・水田などでも見かけることができます。
極東地域だけに分布する貴重なワシで、
カラフト北部やオホーツク海沿岸地方、カムチャッカで繁殖し、
日本には冬鳥として南下してきます。
みやこどり
全長約45cm、赤白黒の色彩を持ったチドリの仲間です。
『古今和歌集』などにも登場しますが、昔はユリカモメのことを指していました。
くちばしは貝殻を突き破るほど硬く、
二枚貝類を主食にしていて、貝をくちばしでこじ開けて中身を食べます。
カイツブリ
目の下から首にかけて、夏は赤みがかった茶色をし、
冬は黄色みのある茶色に染まる鳥です。足には各指に水かきがあり、
足で泳ぎながら小魚やエビを食べます。
日本では全国に分布しています。
琵琶湖の古名は「鳰(にほ)の海」と言い、
鳰=カイツブリなどの水鳥が集まるという意味でこの名前がついたそうです。
琵琶湖は昔からカイツブリとして知られていたようです。
ムラサキシジミ
シジミチョウ科の蝶です。
宮城県以南に分布し、照葉樹林に生息します。
羽を広げると光沢のある青紫が美しく、裏面は灰色、
黒い斑点が並ぶ模様がしじみに似ていることからこのような名前がつきました。
表面の美しさとは対照的で、
裏面は保護色となっており枯葉に紛れて姿が見つかりにくくなります。
成虫の状態で冬を越し、春が訪れると再び活動を開始します。
この季節の行事やオススメ
雪吊り
積雪の多い地域では、
本格的に雪が降り積もる前の11月〜12月中旬に、雪吊りを行います。
雪吊りとは、積もった雪の重みで枝が折れないように木を守る手法です。
幹に沿って木より高く支柱を立て、
その天変から八方にナワヤ針金を私て一本一本の枝と結びます。
石川県金沢市の兼六園ではライトアップされた雪吊りが人々の目を楽しませます。
事始め・事納め
12月8日
関東地方では2月8日を事始め、
12月8日を事納めとする風習があります。
地方や土地によっては12月を事始め、2月を事納めとするところもあり、年
中行事としては全国で統一されていない行事の一つとなっています。
2月・12月どちらを事始めにするかということは、
何を基準にするかによって変わります。
農作業を基準にすると、農作業の準備が始まるのが2月(事始め)、
農作業の神事が終わるのが12月(事納め)となります。
しかし「こと」が正月に関わる行事とすると12月(事始め)という考え方もあります。
世田谷ボロ市
12月15日・16日
戦国時代の年末(430年以上前)から開かれていた農具の市です。
東京の世田谷で毎年この時期と、1月15日16日に開かれます。
元々は野良着・古道具・補強用の素材・農産物を
持ち寄ったことからボロ市という名前が付けられました。
今では出店数が700以上にも上る大規模なものになっています。
その場で蒸してついたお餅が入った「代官餅」が名物で、
あんこ・きなこ・からみの3種類の味があります。
「からみ」は、ネギやミョウガ、のりなどが混ぜ込まれた大根おろしがたっぷりと乗っています。
浅草羽子板市
12月17日〜19日
東京の浅草にある浅草寺では縁起物の羽子板が立ちます。
暮れの大賑わいで、境内にずらっと羽子板の出店が並び、見物客で賑わいます。
羽子板には悪い虫が寄せ付けないという縁起があり、
女子の生まれた家に贈る風習が生まれました。
江戸時代は「暮れの市」「歳の市」で年神祭の用具や正月用の飾り物などが
売られていましたが、形を変えて現在のように羽子板市になりました。
大掃除
一年の汚れを落とす年末の恒例行事です。
日本では、「掃除」という言葉が使われ始めた平安時代に始まり、
主として煤払いをしていました。
昔は家の中にかまどや囲炉裏があり、
家の中が煤だらけになりました。
そこで煤を払うことが、掃除をすることの象徴でした。
また、旧暦の12月13日は婚礼以外は万事に大吉とされる鬼宿日(きしゅくにち)だったことから、
この日に正月準備を始める風習が定着していきました。
現在では年末年始のお休みに入る前に仕事場を掃除する場合や、
12月に入ってから少しずつ大掃除を始める家庭もあります。
written by はれる88